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Sligh'Hand

Author:Sligh'Hand

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Open Travelers
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ぐったりたぬぬ
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公園内でマジシャンを目指す新米教師。桜の下で「たぬき寝入り」するのがマイブーム。

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釣られたぬぬ

 こんにちは。 ぐったりたぬぬのスラです。 このところ、毎晩キキさんが公園に遊びに来てくれています。 ぐったりしすぎて、せっかく遊びに来てもらっても面白いネタを提供できるわけでもないんですけど、それでも相手していただけるってのは嬉しい限りです。

 さて、話題変わってブログネタ。 しゅーさくさんところでゼロ除算の話題が取り上げられていますが、ちょっとだけ引っかかるところがあったのでツッコミを入れさせていただきます。 ま、ツッコミったって所詮はたぬぬの寝言なので目くじら立てずに軽くスルーしていただけると幸いです……。 じゃぁ書くなよってツッコミはなしの方向で……。





∞ の意味

 引っかかるところってのは ∞ の意味。 しゅーさくさんは 『限りなく大きくなる数字』 あるいは 『表現できないすべての数を表す数字』 って言われてますけど、実際の ∞ は 『あらゆる数よりも大きな数』 と定義された記号です。

 そんなのただの文章表記の問題でしょ。 って言われてしまいそうな気もしますけど、本質的に両者は異なります。 というのも、『あらゆる数よりも大きな数』 は唯一の数を表したものですが、『限りなく大きくなる数』 という表現となると、それが唯一の数であるかどうかはかなり怪しいものとなります。 というのも、限りなく大きくなるということは、その時々によって数が変わる可能性を持っているわけで、どちらかというと数の集合としての性質をもつようになってしまいます。 まして 『表現できないすべての数を表す数字』 となると、それは確実にいくつかの (おそらくは無限個の) 数の集合となります。

 じゃ、∞ が数の集合だったとすると、どんな不都合が生じるのか。 これは極限を扱うときに端的に表れます。 極限 lim(x→α){f(x)} (html ではこういう風にしか書けないんですよねぇ) は 「関数 f(x) において変数 x を限りなく α に近づける」 という処理。 通常、たとえば lim(x){1/x} などとして、x を ∞ (あらゆる数より大きな数)に限りなく近づけると……その極限は 0 ですよb なーんて使います。 ここにおいて、α が唯一の数ではなく、複数の数の集合だったとすると、変数 x は近づいていく目的地を見失ってしまいます。 とすると、lim(x){1/x} という初歩的な極限計算においてもその結果は一意に定まらず、それが 0 と等価であることを言えなくなってしまいます。 それこそ、答えは無限に存在しちゃうわけです。

 あれ? でも、 ∞ が唯一の数を意味するなら、まどろっこしく lim(x){1/x} なーんてしなくても、「1/x において x に ∞ を代入する」 とか 「1/xx = ∞ のとき)」 って書いちゃえば良いんじゃない? なーんて思った方はスルドイb 確かに、唯一の数なら代入することもできそうですし、その方がわかりやすい気もしますよね。 だがしかし! 実は ∞ は唯一の数ではあるものの、 x とは本質的に異なるものであるため、∞ を x 直接代入することは NG なのです。

ここに至って大前提 - 扱う対象は実数とします

 大前提をここまで明かさずに来ちゃったのが拙いんですけど、これまで議論してきた変数 x って、もう少し詳しく見ると一体何だと思いますか? つまり、変数 x に代入されるべき数って、一体何でしょう? これはしゅーさくさんのところでも触れられてはいないんですけど、実はとっても重要な問題。 これが何であるかによって、なんと 0 で割ったときの結果も変わってきちゃうので。 ここでは x を実数としておきましょう

 実数といえば、実数直線上の任意の点であらわされる数ですよね。 実数直線はその名の通り、全ての実数を大小関係の順に並べた直線。 これを任意の箇所でスパっと切ると、その切断箇所によって実数を確定することができるってのが有名な「デデキントの切断」。 っと話が脇道にそれちゃいました。 この実数直線は線分でも半直線でもなく、直線というだけあって、正負両側に無限の長さを持っています。 つまり、正の側にたどればどこまででも大きな実数が存在し、負の側にたどればどこまでも小さい(負の)実数が存在します。

 では、この実数直線の終端に ±∞ が存在するんでしょうか? 答えは No なのです。 ご存知のように、論理上の直線は無限の長さを持っていますし、論理上の実数も無限の数だけ存在します。 つまり、実数直線上のある点に立った場合、それが実数直線上のどれだけ大きな実数を表す位置であっても、あるいは逆にどれだけ小さな実数を表す位置であっても、必ずそれより大きい側と小さい側にさらに線が伸びているのです。 直線に終端はないんですねぇ。

∞ の正体

 じゃぁ ∞ って一体何なのよ? となるんですけど、それは最初に書いたとおり、「あらゆる数よりも大きな数」 です。 もっとも、ここで扱っているものは実数であるという前提に従えば、「あらゆる実数よりも大きな数」 というのがより正確な表現ですね。 ここで着目するべきは、「あらゆる実数よりも大きな」 という部分。 つまり、∞ は実数直線上に存在するどの実数よりも大きい数であるわけです。 ということは、∞ は実数直線上にはない数であり、言い換えれば実数ではない、ということになりますよね。

 実数直線上で大きな値を探そうと思った場合、その直線を正の側にたどればどこまででも大きな数を得ることができます。 ∞ はそうして得られるどんな実数よりも大きな数と定義されたものなので、実数ではないですよ、と。 冒頭にさらりと書いた 「∞ は 『あらゆる数よりも大きな数』 と定義された記号です。」 ってのは、実はこういう意図だったわけです。 そんなわけで、実数変数である x に実数ではない ∞ を直接代入することはできず、だからこそ lim(x){1/x} なーんてまどろっこしい手続きが必要になるわけです。

 ちなみに、「実数直線上のどんな実数よりも大きいという大小関係を主張しておきながら、実数の大小関係を表す実数直線上に乗らないなんて、そんな都合のいい数があるわけない!」 という主張をしたくなるかもしれません。 が、「あるわけない」 のではなく、「そういう性質をもった ∞ という数がありますよ」 と定義したものなので、↑のような主張は意味をなしません。

 なーんて言っちゃうと身も蓋も(ry なので、実数直線と無限大を表す点について少々。

 たしかに、実数直線をユークリッド幾何学における直線として描き表すと両端は無限に長く伸びていくので、その延長線上にはどこまでもに実数直線が続いていて、実数直線に乗らない ∞ なんて数が入り込む余地はないように見えます。 しかし、非ユークリッド幾何学の範疇で扱えば、ユークリッド的な円の内部に無限の長さを持つ "直線" を描くことができるため、その "直線" の延長線上でありかつその "直線" と重ならない点として ∞ を図示することも可能になったりしますb とはいえ、非ユークリッド幾何学を用いて実数直線と ∞ の点を同一平面上に描いたとしても、実数直線から独立した点として表される ∞ は、先に挙げたデデキントの切断によってその数を確定することはできません。 ということは (循環論ですけど)、∞ は実数ではないのです。

 ぇ? そんな幾何学図示できるのか、ですって? もちろん、できますよb でもそれについて語り始めると、少なくとも冒頭からここまでくらいの文章量にはなっちゃうと思うので、また別の機会があればその時に。 (ぁ、逃げた。

0 の扱い - 実数なのに極限が必要?

 ∞ は実数ではない。 だから変数 x に直接代入はできない。 そこで実数の式に対して ∞ を適用したい場合には、極限などというまどろっこしい手続きが必要となる。 ってのがここまでの流れ。 なーんて言われると、じゃ、なんで実数である 0 に対しても、極限を使ったりするの? ってツッコミを入れたくなりますよね。 ぇ? ならないですかそーですか。 そんな方はこの節はサクッと飛ばしちゃってくださいな。

 確かに、∞ が実数の範囲外であるのに対して、0 は真っ当な実数です。 なので通常であれば、x に直接 0 を代入することには何も問題はありません。 では何ゆえ、lim(x→0) {f(x)} なんて表現があるのでしょうか。 その答えは、f(x) の形にあります。 すなわち、f(x) が特殊な形をしている場合に、x に直接値を代入することはできなくなるのです

 lim(x→0) {f(x)} が用いられる場合、おそらくその関数 f(x) は、一般的には r/x のような形をしているものと推測されます。 r も x も実数ですが、実数における除算の定義として、0 で割ること、すなわち 0 除算を認めていないため、x に直接 0 を代入することはできないんですね。 0 除算の自体、除算の範疇で定義されていないのです。

 結局のところ極限ってのは、変数にある数を代入したいんだけれど、その数がそもそもの変数の定義範囲外だったり、あるいはその値を使うと演算の定義範囲外になってしまったりするために直接代入ができないことから、その問題を解決する(抜け道を与える)ために編み出された手続きだったわけです。 実数変数 x に ∞ を代入したいけれど、∞ は実数じゃないから x に直接代入することはできない。 だからせめて、極限の考えを用いて実数の範囲で ∞ に限りなく近づけてい行こう。 そうすると、最終的な値が見えてくるはず、と。 0 の場合も同様に、実数関数 f(x) において x に 0 を代入したいけれど、0 を代入すると 0 除算になってしまうから直接代入することはできない。 だったら、極限の考えを用いて x の値を限りなく 0 に近づけていこう。 そうすれば、最終的な値にどんどん近付いていくはず。 極限ってのはこういう手続きなのです。

r/0 の答えが未定義なワケ - 自然数における割り算からの考察

 さてさて、ここまで来てようやく本論に近づいてきました。 0/0 の答えは一体何なのか。 これまで書いてきた前提に基づくならば、すなわち実数の範疇で語るなら、上にさりげなく書いたようにその答えは未定義です。 じゃ、どうして未定義なんでしょう? これにはいろいろな考え方があると思いますけど、一つの考え方として、その演算に意味がないから、なーんてのもありそうです。 なんだか身も蓋もないですね。

 例として、次のような自然数の割り算の例題を考えてみましょうb

「イソギンチャクジュースが 6 本ありました。 同じ数ずつ 2 人でこれを分けるとすると、1 人あたり何本のイソギンチャクジュースを貰えるでしょう。」

なーんて問題があったとします。 割り算の考え方に基づけば、6 本のいそじゅーを 2 人で分けるので、1 人当たり 3 本ずつのいそじゅーをもらうことになりますよね。 数式で表せば 6 ÷ 2 = 3 です。

 じゃ、この例におけるゼロ除算とは何でしょうか? 数式で書くなら 6 ÷ 0 ってことになりますが、文章で書くと、きっとこんな感じになるでしょう。

「イソギンチャクジュースが 6 本ありました。 同じ数ずつ 0 人でこれを分けるとすると、1 人あたり何本のイソギンチャクジュースを貰えるでしょう。」

0 人で分ける? それって分けるっていえるの? ってわけです。 事実上これは、いそじゅーを分けることにはならないですよね。 仮になにがしかの値が得られたとしても、現実的に意味のある値ではなさそうです。 ってわけで、0 除算には意味がない、となるわけです。

r/0 の答えが未定義なワケ - 極限からの考察

 どうでしょう? ↑の例えじゃぁ、あまりにもあんまりでしょうか? 確かに、実数を扱うと断っておきながら、自然数の範疇でしか話をしていないですからねぇ。 説得力に欠けるかもしれません。 んじゃせっかくなので、実数の範囲で、より一般的な 0 除算を試してみますb とはいっても現状 0 除算自体定義されていないので、それを定義してしまうのではなく、とりあえず極限を使ってみて、その結果 0 除算をすると何が起こるのかを考えてみましょう。

 まず、適当な実数 r (r > 0) を持ってきます。 あとは↑でずーっとみてきたとおり、実数変数 x と極限を使って、x を 0 に近づけてあげれば OK ですねb つまり……

lim(x→0) {r/x} = ∞

ぉぉ、∞ っていう意味をもった唯一の数が得られるじゃないですか! だったら、r > 0 のとき、r/x = ∞ って定義しちゃってもいいじゃないですか! ってなりそうなんですけど、これは罠。 よーく考えてみましょうb ホントに唯一の数が得られるでしょうか?

 今、何気なく x を実数直線の正の側から 0 に近づけていきましたけど、もうひとつの方法として、x を負の側から 0 に近づけることもできますよね。 試しに負の側から近づけてみると……、x を同じ実数である 0 に近づけているにもかかわらず、その極限は -∞ という、先の方法とは 180° 逆の方向へ飛んで行ってしまいます。 いずれの場合も、x を唯一の数である 0 へ近づいているのに、結果は全く逆になってしまうというこの演算に、現実的な意味があると言えるでしょうか。 いや、言えない(反語。

 ま、確かに極限を用いれば、唯一の数の組、すなわち ±∞ は得られます。 じゃ、ちょっと強引ですけど、r/x において r > 0 かつ x = 0 のとき r/x = ±∞ って勝手に定義しちゃっても問題ないでしょって考えも、一概にダメとは言えないんじゃないの? たとえば x2-1 = 0 のような高次方程式の解なんかは、±1 っていう複数の実数の組み合わせだったりしますし。 必ずしも唯一の数が得られることが重要なわけじゃぁないみたいです。 しかしそれが認められていないってのは、一体どういうことなんでしょうか?

ちょっと寄り道

 何かを議論しようとしたとき、共通の土俵がないと話がうまくかみ合わないことはよくありますよね。 ここで問題になるのはそういうお話。 具体的な例として、まず自然数を扱うことにします。

 自然数しか存在しない (他の数の体は定義されていない) 世界を想定してみてください。 この世界で自然数の集合から任意の自然数、たとえば 3 と 2 を選んで、四則演算の一つである 3 ÷ 2 という計算をしてみたとしましょう。 この結果はいくつでしょうか? 3/2 でしょうか? それとも 1.5 でしょうか? 実はどちらも不正解です。 というのも、3/2 も 1.5 も自然数ではないですからb 自然数しかない世界にあっては、自然数以外の数は使えません。 じゃ、どうするか。 考え方は 2 つあります。

 1 つはその演算について考え直すというもの。 上では何も断りなしに割り算を行ったわけですけど、割り算によって得られる値として "商" しか想定していなかったために、上のような事態に陥ってしまったわけです。 そこで、割り算の考え方を変えて、"商" と "剰余(あまり)" を答えとするようなものと定義すれば、問題は解決します。 すなわち、3 ÷ 2 = 1 … 1 (1 と余りが 1) ですねb 剰余を定義することで、演算の結果はちゃんと自然数の範疇に収まるようになりました。 これが 1 つ目の考え方です。

 もう 1 つの考え方として、扱う数の範疇を広げるというものがあります。 今、自然数しかない世界を考えましたけど、その世界では扱えない数 (3/2 とか) が出てきてしまいました。 自然数で扱えないなら、それら新しいタイプの数も扱うことのできる新しい数の体系を定義しちゃえば良いじゃなーい。 ってのがこの考え。 詳しい定義とかなんとかかんとかは他所様に丸投げしますけど、ここでは有理数という数の体系を定義することで、すべての自然数の商を表現することができるようになります。 もっといえば、全ての有理数の商も、有理数の範疇に収まります。 有理数すごい! 有理数万歳! (ナニ。 ただし、0 除算は除きます。 念のため。

 だんだん変なテンションになってきちゃいましたけど、結局何が言いたいかっていうと、ある数の体系 (たとえば自然数) に対してある演算 (たとえば割り算) を行う場合、その結果得られる数がもとの数の体系を逸脱するのは、ちょっとした不都合があるわけです。 上で見たように、割り算がその結果得られる答えとして "商" しか認めない演算だった場合、然数同士の割り算 3 ÷ 2 の答えは自然数の範疇では定義できません

 このように、ある数の体系 Mに対してある演算 P をおこなうことで、その数の体系から逸脱した数が現れてしまうことを、M は P に対して閉じていない、なーんて言ったりします。 閉じていないと、その演算結果を定義することはできません。 自然数に対する演算 3 ÷ 2 の結果として、何の断りもなく有理数 1.5 を答えてしまうと、それは果たして自然数について議論しているのか、有理数について議論しているのかわからなくなってしまいます。 あらかじめ閉じた体系を構築して、その土俵の上で議論してあげないとダメなのです

r/0 が未定義なワケ - 数の体系からの考察

 さて、話を本題に戻します。 まず、2 つ前の節の最後に書いた、実数 r と 0 に対して r/0 = ±∞ となるような割り算を定義するとしましょう。 すると、どーなるでしょうか。 ずーっと前の方に書いたとおり、∞ は実数ではないので、実数はこの割り算に対して閉じていないということになりますよねb このままでは実数の範疇において割り算を定義できなくなってしまいます。

 で、それに対して、実数を対象とした数学はどんな策を講じているかというと、先の節で紹介した回避策その 1 を用いるわけですね。 つまり、割り算という演算について考え直すわけです。 そりゃそーです。 実数の範疇で議論したいのに、勝手に数の体系を拡張しちゃぁ都合が悪いですからb

 じゃ、割り算に対して、どのようなルールを適用すれば、この問題が回避できるか。 もうお分かりですねb 0 除算を禁止しちゃえば良いのです。 実数の範疇における割り算では、0 で割ることを禁止します。 実数 a と b があったとき a/b を計算したければ b ≠ 0 にしなさいb と。 0 除算が禁止されているので、その結果は当然定義されません。 というか、定義する必然性がないのです。 必然性がないものを定義してもそれはへびのあし。 定義自体に意味がない、ってわけで定義しないままにしてある、と。 これが、0 除算の結果が定義されないと言われる所以なんだろうと。

そういえば、そもそもの問題ってナニ?

 ここまで書いておいて、アレなんですけど、一つ謝罪しておかないといけないことがあります。 実はスラ←、しゅーさくさんとこの記事を読んだだけで、この議論の大元となった最初の記事、 "0/0 は有限なのか?" を読んだわけじゃぁないのです。 したがって、これが実数の範疇の議論なのか、あるいは ∞ まで含んだ新しい数の体系での議論なのかは把握していません>< ごめんなさいごめんなさい><

 しゅーさくさんとこの文面を見る限り(明言はされていないものの) 実数の範疇でのお話と (少なくともスラ←には) 読めたので、勝手に実数の範疇における 0 除算として議論を進めちゃいました。 その結果が、上記。 実数においては、0 除算の結果を定義する意味がない。 だからあえて定義しないままにしてある。 というものでした。

 そんな 0 除算の結果を、あえて定義するとどうなるのか。 そもそもの問題はここ、でしょうか。 実はこれ、何パターンでも考えることができます。 というのも、数の体系もその体系における演算も、定義を与えることは自由なので。 もちろん、定義するのであれば、その定義によって他に矛盾をきたさないように数の体系自体を調整する必要が出てくるので、その数体系はすでに実数じゃなくなっちゃいますけど。 ま、そんな中で 0 除算を定義すると、それの結果は有限になるのか、あるいは無限の数を持つ数の集合となるのか、ってのが議論の対象なんでしょう、きっと。

0 除算を定義してみる

 じゃ、試しに 0 除算を定義してみましょう。 といっても、何もないところからいきなり数の体系を構築するのはめんd(ry

 大人の事情により、実数を拡張して、既存の実数とそのいずれよりも大きい +∞ と、いずれの実数よりも小さい -∞ を含む 「ぐったり数」 なーんていう数の体系を考えます(あくまでもスラ←が勝手に考えたものです)。 ここで、ぐったり数は実数の性質をリスペクトするものとします。 つまり、実数の性質をそのまま受け継いで、かつ、0 による除算も可能にしてしまおうという大胆な試みです。

 まず、+∞ と -∞ を用いて 0 除算を次のように定義して、これをぐったり数における公理、すなわち、いちゃもんつけずに受け入れる前提条件とします。

  • 任意のぐったり数 r' について r' ≠ ±∞ かつ r' ≠ 0 のとき、r'/0 = lim(x±0){1/x} = ±∞ …… (1)

おっと、いきなり r' ≠ ±∞ とか r' ≠ 0 なんていう条件がついちゃいました。 のっけからスマートじゃない公理になっちゃいましたけど、そもそも実数では、除算 a/b に対する制約として、b ≠ 0 ってのがあったわけなので、ここで上のような制約が生じることには目をつむってもらうとしましょう。 そうすれば上の定義は、ぐったり数の範疇で成立する演算ですからb

 ところで、このぐったり数は実数の性質を受け継いで、かつ上に示したような公理を付加したものとして定義されたわけですけど、このぐったり数の公理は、他の実数の公理を満たすでしょうか?

 実数の性質として、それが「体(たい)」であること、ってのがあります。 体であることの条件の一つとして、そこに含まれる任意の数 a について、a×a-1 = a-1×a = 1 を満たす、逆元 a-1 が必ず存在する、というものがあります。 ある数にそれをかけると答えが 1 になる、いわゆる逆数ってやつですね。 これが、実数に含まれるすべての数について存在する、と。 こういう性質があります。

 じゃ、ぐったり数ではどうでしょうか? ぐったり数は実数の集合に ±∞ を加えたものなので、±∞ が上の条件を満たせば問題ないわけですね。 つまり……

  • +∞ について: +∞×(+∞)-1 = (+∞)-1×(+∞) = 1 ?…… (2)
  • -∞ について: -∞×(-∞)-1 = (-∞)-1×(-∞) = 1 ?…… (3)

あ、あれれれれれ? これって、不定形っていうアレですよね……。 不定形は確か、実数の範疇では値が定まらなかったような……。 だんだん苦しくなってきましたw

 ま、これも、ぐったり数の範疇ではそういう結果になる、っていう公理に含めちゃえばいいんですけどね。 つまり、最初から、この節で紹介した (1)、(2)、(3) のような性質を満たす数 +∞ および -∞ が存在するものとする、と。 んで、この新しい公理が他の公理に矛盾しないことが言えれば OK なわけです。

 え? いろいろ後付けででずるい? まぁ、確かにずるいっちゃぁずるいんですけど……。 こんな無理やりな手順を踏むかどうかは別として、r/0 = ±∞ という演算を定義してあげて、それが矛盾しない数の体系をつくってあげれば、0 除算の結果も決めることができるわけです。 言いたかったのはそれだけ。 ちなみにぐったり数の例だと、0 除算の結果は実数関数 r/x において x を 0 に近づけた極限です。 ゼロに近づける方法は正の側から近づける方法と負の側から近づける方法があるので、それぞれの結果として ±∞ という 2 つの値が得られます。 したがって、ぐったり数の範疇では 0 除算の結果得られるのは 2 個という有限のぐったり数の組み、となります。 ただし、r' = ±∞ だったり r' = 0 だったりした場合には除算が禁止されているから 0/0 の答えはやっぱり未定義。

 強引に 0 除算を定義したとしても、0/0 を定義するのって、楽じゃないですねぇ。

0/0 除算を定義した実例

 純粋に論理的な数学の話題とはちょっと離れますけど、実は 0/0 の答えを定義している分野も存在します。 それはコンピュータの分野。 IEEE 754 という浮動小数点に関する規格では、数を 0 で除算した際の結果が厳密に定義されています。

 IEEE 754 では、この範疇における任意の数 f について、f が正の数であれば f/0 は +∞、f が負の数であれば f/0 は -∞ と定めています。 また、実は 0 の概念があって、負のゼロ、すなわち -0 なんてものも存在します。f をこの -0 で除算した場合、f が正の数であれば -∞、f が負の数であれば +∞ 、符号なし(というか正の) 0 とは符号が逆転した結果が得られます。

 そして気になる 0/0 ですが、やっぱりちゃんと定義されています。 その結果は NaN。 「なん」ってなんだーーーーっ、ってことですが、Not a Number、すなわち 「数じゃない」 の略。 ぁー、こういう解決方法があったのね。 コンピュータの場合、とりわけプリミティブな計算において計算結果が複数存在することは極めて都合が悪いので、0/0 を NaN という一つの結果として定義する需要があったのでしょう。

 ちなみに、浮動小数点についてはゼロ除算の結果が定義されていますけど、コンピュータが扱う整数についてはこのような 0 除算の定義は(規格としては)存在しません。 一般的には例外が返ったり、あるいはプログラムが終了したり、ひどいとプログラムが暴走したりw その結果はある意味無限の可能性がありますb そういう無限の可能性があることをもって 0/0 の結果は無限の要素を持つ集合だよb なーんて主張をしたら、それは数学を飛び越えちゃった話題ってことになるんでしょうか。

まとめ

 さてさて、∞ の意味から始まって 0 除算の定義を試み、さらには 0/0 を定義した実例を眺める似非数学的駄文の旅はいかがだったでしょうか。 まぁ、冗長にも程がある文章なので、途中で飽きられてしまっている可能性大だという自覚も多少はありますけど……。 本はこれ以上足すものがなくなった時ではなく、これ以上削るものがなくなったときが完成だと言われます。 あっちこっちに寄り道して、結局へびに足をつけたようなこの記事は、きっと誰かに読んでもらうための本にするなら失格でしょう。 けれど、単に自己満足のために書き散らした落書き、あるいは、つれづれなるままに書き連ねられた寝言とするなら、これもこれでアリなんじゃないかな、なーんて思ったりもします。

 本文中において 0/0 の結果は、結局定義することができませんでした。 これは単に定義できる数の体系を作ることができなかったからというだけではなく、0/0 が真っ当な意味を持つ世界をスラ←考えることができなかったから、というところに起因します。

 論理的なな定義に基づいて、意味を持つ 0/0 を議論するのであれば、実数の枠を超えた新しい数の枠組みを規定する必要があります(既に存在するのかもしれませんけど)。 この枠組みにおいては、0/0 の答えは浮動小数点のように 1 つに定義されるのかもしれないですし、あるいはぐったり数のような拡張をして 、正負 2 つの ∞ という定義を受けるかも知れません。 もしかしたら、しゅーさくさんが言われるように、0/0 が無限の解をもつことに意味があるという結論に至るのかもしれません。

 いずれにしても、今日のスラ←には、そういった 0/0 が意味を持つ世界を見ることができなかったので、0/0 に有意な定義を与えることができなかったわけです。 将来的にそういう世界を思いついたら、そのうえで無矛盾な体系を構築してみたいと思います。

 勝手に数の体系を作っちゃってもいいのか、って話はあるかと思いますけど、実は数学は相当に自由なものです。 一見すると、数学ってのは厳然たる定義・論理に基づいて、常に不動な存在であるかのように見えるかもしれませんけど、それは必ずしも正解ではないわけです。 最初に定義を与え、公理系を確立し、無矛盾な世界が構築できたなら、それは数学的に誤りのない世界のモデルです。 ここで最初に与える定義や公理は、極端な話、何でもいいのです。 後に矛盾しなければb 事実、実数の定義は 19 世紀以降カントールら (スラ←はこの辺りの人たちしか知らない) によってそのその定義が見直されて来ましたし、紀元前から唯一の幾何学だと信じられていたユークリッド幾何学にしても、これも 19 世紀になって互いに矛盾しない非ユークリッド幾何学が成立しています。 これらは、時代や環境の要請に基づいて研究され、見出されてきた知見だと言えます。

 新しい知識によって古い知識は補完され、あるいは更新され、あるいは捨てられちゃいます。 時代や環境の要請が 0/0 に定義を求めるのであれば、いずれ誰かが無矛盾な数体系とともに 0/0 の解を定義することになるでしょう。 その 1 つの結果が IEEE 754 の規格であることは先に挙げたとおりです。 ただ、少なくとも初等的な数学として 0/0 を定義していないというか、それを定義した数体系が一般に用いられていないところをみると、それを定義することに対して、本質的な要請はあまりないのかもしれません。 あるいは、それを矛盾なく定義することで、夢のような数の体系が手に入れられるのに、だれもそのことに気づいていないだけなのかもしれません。 少なくとも、スラ←はまだそれに気付けていない 1 人です。

 だらだらと書き続けたら、まとめまで長くなっちゃいました。 結局本論における結論を出していないのに、です(ぁ。 ホントは、無限大と無限集合の違いとか、そのあたりにも触れたかったんですけど、それはやっぱり脇道にそれた話題になるので、今回は端折っちゃいました。 機会があれば、またいずれ。

 ぁ、それから最後に大事なことを 1 つ。 スラ←はずーっと 「数学がダメダメな子」 と言われ続けて今に至っています。 んなわけなので、上の文章の中では、数学的に間違った表記とか、ダメダメな定義とかがされている可能性があります。 鵜呑みにするのは要注意。 間違いの指摘は真摯に受け止めますけど、その際は何とぞお手柔らかに……(ぁ。 人の記事にツッコミ入れるところから始まった記事のオチがこれですかっ! ってことなんですけど、ま、それはそれ。 この記事の内容をもとに誰かとお話しするときは、ちゃんとご自分でウラをとってからにした方が、きっと身のためですよb じゃぁ書くなよってツッコミはなしの方向で……。

 ここまでお付き合いいただいた皆様も、盛大にスクロールしてここだけ読んでしまった皆様も、寝言にお付き合いいただきありがとうございました m(_ _)m

これこそ蛇足

 万物に暁通するという白澤の目から見たら、この問題はどう見えるんでしょうか……。 いやはやまったく、興味は尽きません。

たぬぬのねごと | 15:59:11 | Trackback(0) | Comments(0)
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